過激発言の裏側には。

  トランプ大統領は過激な発言を繰り返すことで国民の支持を得てきた。その発言は人種などのマイノリティを差別するものであることから、多くの国民が賛同できるものではない。過去の発言を見てみると、「オバマには大統領になる資格がない、彼はアフリカ(ケニア)生まれだから」「イスラム教徒は入国を禁止にすべき」などがある。前者は前大統領のバラク・オバマに対する個人的な差別と、アメリカに在住するアフリカ系アメリカ人は大統領になる資格がないというニュアンスがあることから国内では大騒動になった。後者ではイスラム教徒を危険な人種であるかのように扱っているとして非難された。これらは、民族をひとくくりにした差別発言である。このようなトランプ大統領のこうした発言が多くの人の反感を買ったであろう。これらの批判は、オバマ前大統領に向けた発言では、アフリカ系の人種はアメリカ人としての権利を認めないものでもあるとして危惧された。また、イスラム教徒に対した発言に対しては、イスラム教徒をテロリストと断定したことからである。一方で政策面を見てもトランプ大統領が過激であることがわかる。具体的にはメキシコとの国境に壁(グレートウォール)を建設することや締結間近であったTPP(Trans-Pacific Partnership Agreement)の離脱、メキシコとのNAFTA(North American Free Trade Agreement)の再交渉など世界を混乱させかねない。TPP(Trans-Pacific Partnership Agreement)にはオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11カ国が関わっており、アメリカ離脱により再び議論をすることを余地なくされた。NAFTA(North American Free Trade Agreement)ではカナダのジャスティン・ドルドー大統領との通商会談が中止になり、隣国との関係が険悪である。国際的には多くの批判がある中で、なぜトランプはこうした政策を掲げるのか。  その理由としては、外国人労働者によってアメリカの雇用が破壊されている現状を改善するためである。「ルポ・トランプ王国」の第4章での「没落するミドルクラス」には「みんな昔より2倍働いているのに稼ぎがてるなんてうんざりでしょう。私は理解していますよ。」「 NAFTA(North American Free Trade Agreement)は我が国を破壊した。TPP(Trans-Pacific Partnership Agreement)はもっとひどくなりますね。」「クリントン大統領時代のNAFTA(North American Free Trade Agreement)から物事が悪い方向へと流れ始めた。製造ラインが次々に不採算と認定され、メキシコに出た。間も無くブラジルや中国に流れた。アメリカで800人を解雇した会社が直後にメキシコで同じ数を採用した。そんなニュースの繰り返しだった」 と不満を漏らすブルーカラー労働者が多数いた。このような不満の持ち主は、かつて民主党の支持地盤の多い地域であったラストベルト(さびついた工業地帯)のブルーカラー労働者であった。旧来までの民主党は労働問題を重点的に考えていた。だが、現在の民主党は人権問題やマイノリティ保護、ダイバーシティへと路線を変更した。こうしたこともあり、ラストベルトの労働者は民主党を支持しなかったのだと考えられる。こうしたこともあり、労働者を第一に考えるトランプ大統領は政党関係なく、多くの労働者の支持を取り付けたであろう。先述したように、アメリカが主導していたのに関わらず、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11カ国が関わっていたTPPから脱退してしまうことやNAFTAの再交渉を示唆していることも労働者の不満を組んであるからだと言える。本書でブルーカラー労働者の意見を見てみても、自由貿易やグローバル化による賃金の低下に対するものや、工場移転によって失職したことに対して批判が集中していることがわかる。こうした背景から、過去のトランプの発言にあった「オバマには大統領になる資格がない、彼はアフリカ(ケニア)生まれだから」「イスラム教徒は入国を禁止にすべき」というように外国人を排斥することがわかる。  こうした今までの発言や政策を分析してみると、アフリカ系やイスラム系への発言は、グローバル化や自由貿易で不利益を被るブルーカラー労働者へ向けたSOSなのかもしれない。たしかに大統領選挙期間中の発言や政策は外国人を排斥するものの多かった。その発言によって、国際社会から非難されることもあり、対外関係に支障をきたしたのも事実である。これらの発言や政策はマイナスイメージばかりであった。しかしアメリカの現状の問題の本質を捉えているのには間違いない。たとえ、国際社会から非難されようとも、アメリカのブルーカラー労働者の保護をアピールに成功したであろう。こうしたこともあり、アメリカンファーストが国民から受け入れられたのも事実である。 

ウイッスル

フリーライター 自称ジャーナリス ト レポートの代行、アドバイス行ってます。

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